佐賀県立唐津南高等学校の生徒が佐賀県相知町で養蜂に挑戦! “唐津ミツバチプロジェクト”を発足した生徒にインタビュー!

左から:佐賀県立唐津南高等学校 食品流通科 奈切蓮華さん(3年)、野﨑宙奈さん(3年)
故郷を未来に残すために、自然を活かした魅力を創出!
佐賀県立唐津南高等学校と相知町横枕地区の住民が協力して活動している“唐津ミツバチプロジェクト”。プロジェクトの立ち上げメンバーでもある唐津南高校3年生の奈切さんと野﨑さんは、ニホンミツバチの養蜂をはじめ、横枕地区の花植えや外国人向けの農業体験ツアーなど、横枕地区の自然を活かした魅力作りに取り組んでいます。今回は養蜂に青春を捧げる、奈切さんと野﨑さんに話を聞きました。
—唐津ミツバチプロジェクトの活動内容を教えてください。
奈切:唐津ミツバチプロジェクトでは、佐賀県相知町の横枕地区でニホンミツバチの養蜂を行っています。巣箱の製作や清掃など養蜂に関することはもちろんですが、それ以外にもひまわりの種や花を植えたりなど、横枕地区の自然を活かした地域を盛り上げる活動もしています。また、昨年度は自分たちで採蜜したハチミツを使った和菓子教室を開催しました。横枕地区は、環境省の『自然共生サイト』に認定されている区域なんです。『自然共生サイト』の情報を見て来訪される外国人の方向けに、観光と農業を組み合わせたツアーなども行っています。
▲地域住民の方たちと巣箱を設置している様子。
▲巣箱清掃の様子。
—唐津ミツバチプロジェクト発足の経緯を教えてください。
奈切:相知町の横枕地区は、山に囲まれ、厳木川(きゅうらぎがわ)という綺麗な川が流れている自然が豊かなところです。しかし住んでいる方の多くは70歳を超えており、若い人が少なくて。10年後、20年後には横枕地区自体がなくなってしまうのではないかと思い、横枕地区を未来に残すためには新しい魅力を作ることが大事だと考えました。そこでまずは佐賀県で養蜂を行っている方が少ないというところに着目して。養蜂であれば花や植物がたくさんある地域の特徴を活かすこともできると思い、2023年にプロジェクトを発足しました。
—初めて養蜂に挑戦した感想を教えてください。
奈切:養蜂となると至近距離で蜂と接しなければいけないため、最初は怖かったです。一度間違えて巣箱を開けてしまい、巣箱から大量に蜂が出てきたことがあって。刺されるのではないかと覚悟しましたね(笑)。でも今は楽しいです! この活動を始めていろいろな方と関わることが増え、「こんな活動をしていたんだ、すごい」と言ってくれる方もいて、魅力を伝えられてよかったなと思います。
野﨑:私も最初は怖かったのですが、活動をしていくうちに“私たちがやらなきゃ”と思うようになって。横枕地区は高齢の方が多いので、私たちが先陣を切って魅力を発信していこうという責任感が生まれました。
—昨年9月に初めて採蜜を行ったそうですが、その時の感想を教えてください。
奈切:私たちが育てているニホンミツバチは少量しか蜜を持ってこられないため、採蜜するまでに半年近くかかりました。採蜜してすぐ食べたのですが、甘みが最初に来て、その後さっぱりとした味わいになり美味しかったです。甘みだけでなく、酸味や塩味も感じましたね。
野﨑:蜂の巣をそのまま手で潰して絞って食べたのですが、とても甘かったです。
▲防護服を着て、初めての採蜜に挑戦。
▲設置した5つの巣箱から、瓶3個分のハチミツを取ることができたそう。
—採れたハチミツはどのように活用したのですか?
野﨑:私が在籍している食品流通科では製菓実習や製パン実習などに取り組んでいるのですが、地域に住む子どもたちに日本の食文化に触れて欲しいなと考え和菓子教室を開催しました。和菓子教室では、どら焼きと三色団子を作ることにして。当日は近隣に住む小学校低学年の子どもたちが10人以上参加してくれました。どら焼きには生地にハチミツを入れて、三色団子には生地に入れるほかに、完成した三色団子の上からもハチミツをかけました。学校や家で何度も試作して準備してきたので、「お家でお母さんと作りたい」や「美味しかったよ」という感想を聞けてとても嬉しかったですね。また、余ったハチミツは別プロジェクトに提供して、保育園のパン作り教室で活用されたそうです。
▲野﨑さん主催の和菓子教室でハチミツを使用。
—活動の中で一番思い出に残っていることは何ですか?
奈切:地元で採れたハチミツを保育園のパン作り教室などの横枕地区以外の場所に提供し、それを受け取った方が地域の想いを大事にして使ってくれたことを知った時です。実際に「美味しかった」などの声を聞けたのはとても嬉しかったですね。
野﨑:1年生の時から力を入れて学んできた養蜂だったので、自分たちでハチミツを採って和菓子教室の開催やパン作り教室への提供につなげられたことが嬉しかったです。
—奈切さんは8月に行われる「日本学校農業クラブ連盟大会」の九州大会に出場されるそうですが、大会の意気込みを教えてください。
奈切:質疑応答がとても苦手で心細いけれど、九州大会では全国に横枕地区の魅力を発信できるように頑張ってきたいと思います。このプロジェクトは野﨑さんと二人で立ち上げたのですが、メンバーが足りず大会には個人の部として出場しているんです。養蜂を一緒にやってきたほか、和菓子教室の主催をしてくれたりと、野﨑さんのおかげで発表ができています。
—今後、唐津ミツバチプロジェクトで挑戦してみたいことや開発してみたい商品を教えてください。
奈切:今はハチミツ部分しか使っていないので、巣を絞って余った部分の活用ができないか考えています。例えば、化粧品やバーム、保湿系のものができたらいいなと考えています。またハチミツ自体もパンや和菓子だけでなく、洋菓子などいろいろなところで使用したいです。
野﨑:相知町以外でも和菓子教室を開催したいなと思っています。学校でもハチミツを使った商品を開発したいと思っているので、完成したら学校の生産物販売会に出品したいです。
—相知町横枕地区の魅力を教えてください。
野﨑:横枕地区には井堰(いせき)祭りという、自然に感謝して川の環境を守るために掃除をするお祭りがあります。綺麗に掃除した川の水を田んぼに引いてきて美味しいお米ができたりと、自然と共生しているところが魅力です。
奈切:良い意味で何もないのが一番の魅力です。この環境を地域の人があたりまえに守っていること、他人事だと思わずに自分たちの地区だから守ろうという想いを持っている人が多いのが素敵だなと思います。
—今後の展望を教えてください。
奈切:将来的に見ると、今の横枕地区は魅力を守っていく人が減っていくのが現実です。だからこそ、人を呼び込むというよりも、横枕地区を一緒に“守っていく”人たちを探したいなと思っています。海外からボランティアに来られる方もいるので、相知町を守りたいという強い意志を持った方と一緒に活動をしていきたいです。
▲海外の方に横枕地区の魅力を伝える体験ツアーを実施。
◾️佐賀県立唐津南高等学校
https://www.education.saga.jp/hp/karatsuminamikoukou/
佐賀県唐津市にある公立高校。生産技術科・食品流通科・生活教養科の3つの学科を設置しており、農業と家庭の専門的な知識と技術を習得し、関連産業を担う人材を育成しています。「唐津ミツバチプロジェクト」では、唐津南高校の生徒と相知町横枕区の住民が協力して養蜂活動を行っています。養蜂活動を通じて、生物多様性の保全と持続可能な社会の実現を目指しています。