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岡山県立矢掛高校の「制服リメイク」が、カンボジア難民キャンプの子どもたちへ

2026.01.18
岡山県立矢掛高校の「制服リメイク」が、カンボジア難民キャンプの子どもたちへ

“やかげ学”発の探究が、戦禍で「おしゃれ」を奪われた女性・子どもに希望を届ける――生徒制作のシュシュを現地授業で活用

 特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(代表:中村雄一)は、岡山県立矢掛高等学校にて、経済産業省の探究校務改革支援補助金事業の採択校として「世界とつながる学び」講演会を実施。講演を起点に、生徒たちが「今、自分にできることで世界を応援する」活動に取り組み、その成果である教材が、カンボジアの難民キャンプでの教育活動の中で実際に活用されました。

 

背景:戦禍の避難生活で失われる「学び」と「自分らしさ」

 避難生活の現場では、衣食住だけでなく、子どもたちの心を支える遊びや学び、そして「自分らしさ」を取り戻す小さな喜びが不足しがちです。矢掛高校の生徒たちは、制服リサイクル活動を単なる環境活動として終わらせず、「戦争下でおしゃれを楽しめない女性や子どもに贈る」という目的へ接続し、使わなくなった制服をリメイクしてシュシュを制作。現地での教育活動の中でプレゼントとして届けました。

矢掛高校生徒が考案した「世界とつながる学び」の教材制作ポスター

 

カンボジアの現状:避難の長期化が奪う「日常」と、女性・子どもに集中する負担

 今回、教材と支援物資を届けたカンボジアの避難民コミュニティでは、地域の緊張と衝突の影響により、住民が安全な場所へ移動せざるを得ない状況が続いています。避難先は寺院などの共同施設になることが多く、生活は一時的な「仮住まい」ではなく、先の見えない長期化に陥りやすいのが現実です。

避難生活では、まず水・食料・衛生などの最低限の確保が優先され、衣類や身だしなみに気を配る余裕は後回しになります。特に、子どもと日常生活を支える役割を担う女性は、家事・育児・物資配給・安全確保といった負担が集中しやすく、心の余白を失いがちです。子どもたちもまた、遊具や学用品が不足する環境で、同年代の関わりや遊びの機会が減り、安心して笑う時間そのものが乏しくなります。

さらに、避難民キャンプでは「何かを選ぶ」「自分を整える」といった当たり前の行為が制限されます。服を選ぶ、髪を整える、身だしなみを楽しむ――こうした小さな自己決定が奪われることは、単なる生活の不便さにとどまらず、「自分でいられる感覚(自分らしさ)」を弱め、意欲や自己肯定感の低下につながり得ます。

 だからこそ、矢掛高校の生徒たちが作ったシュシュは、物資としての価値だけではなく、「あなたは大切にされている」「自分を整えていい」というメッセージを伴う“心の支援”として意味を持ちました。髪を結ぶという小さな行為が、子どもや女性にとって「日常を取り戻す入口」になり得る――その現実があるからこそ、シュシュは難民キャンプの中で効果を持ったのです。

シェムリアップにある、カンボジアの今回の戦争を描いた絵画

絵画の一部

絵画の一部

 

矢掛高校の強み:「やかげ学」が生む、地域と世界をつなぐ探究

 矢掛高校では「やかげ学」として、地域課題解決型の探究学習に継続的に取り組んでいます。今回の活動も、地域で培ってきた探究の姿勢を、国際貢献へ拡張した実践です。
「教科書の中の世界」ではなく、「自分の手で、誰かの今日を支える世界」へ。生徒たちは講演会後の感想で、世界を“遠い話”ではなく“身近な現実”として捉え直しています。

ユネスコスクールとして様々な取り組みを行なっている矢掛高校

矢掛高校はユネスコスクールとして認定されている

今回シュシュにリメイクされた生地は使わなくなった制服から裁断されたものだった

矢掛高校で「世界とつながる学び」講演会を行うなかよし学園中村雄一代表

 

今回のカンボジア支援で活用された「矢掛高校の教材」

1)制服リメイクの「シュシュ」:贈り物から、自己表現の回復へ

 矢掛高校の制服リサイクルメンバーが制作したシュシュは、難民キャンプで暮らす女の子・女性たちに届けられました。
 戦争は命だけでなく、日常の楽しみ、身だしなみ、自己表現の機会も奪います。だからこそ、生徒たちは「おしゃれを楽しめない」現実に目を向け、“髪を結ぶ”という小さな行為が、明日を生きる気持ちに変わる可能性を信じて制作しました。

戦争被害を受けたアンロンベンの女性達にプレゼントされた矢掛高校のシュシュ

長く続く避難生活でおしゃれを我慢していた人々に笑みが溢れた

日常の「当たり前」を奪うのが戦争。矢掛高校生徒達は当事者として関わることで戦争の悲しみを学んだ

 

 さらに今回、シュシュは難民キャンプの女の子・女性だけでなく、地雷被害を受けたBEL氏の娘たちにも手渡されました。髪を結ぶ、身だしなみを整える――その“当たり前”が、戦禍と避難の中では贅沢になってしまう。だからこそ、矢掛高校の生徒たちが制服をほどき、もう一度「誰かの明日」に結び直したシュシュは、単なる贈り物ではなく、“あなたの人生はここからも続く”という合図になりました。

姉妹でシュシュをセットする様子

 

 そして、カンボジアを語る上で避けて通れないのが、地雷と不発弾(爆発性戦争残存物:ERW)の現実です。カンボジアは内戦と武力衝突の長い歴史の中で、地雷・クラスター弾を含む爆発性残存物に広範に汚染され、現在もなお推計300万〜400万規模の地雷・残存爆発物が人々の生活を脅かしていると報告されています。さらに近年の国境地帯での緊張では、クラスター弾使用をめぐる非難も報じられており、戦闘が再燃すれば“不発弾が新たに残る”という懸念が現実のものになります。

 

 なかよし学園は、こうした環境下で子どもたちの命を守るため、現地関係者と連携し、EORE(Explosive Ordnance Risk Education:地雷・不発弾啓発授業)を実施しました。EOREは、疑わしい物に触れない、近づかない、見つけたら大人や当局に知らせる等の行動を徹底し、事故を防ぐための国際標準の教育アプローチです。 また、カンボジアの地雷問題を世界に伝え続けてきたAki Ra氏(カンボジア地雷博物館の創設者)も、同国の地雷問題の象徴的存在として広く知られています。

Aki Ra氏と共にEOREを行うなかよし学園

地雷の被害を一人でもなくす活動をなかよし学園は行っている

地雷犠牲者のアラさんも自らの体験から人々に地雷の恐怖を語っている

 

戦争は、終戦と同時に終わりません。

 

 爆発物は残り、土地は戻らず、歩くこと・遊ぶこと・学ぶことのすべてに「見えない危険」が混じる。そうした“戦後”が半世紀近く続く国で、矢掛高校の生徒たちは、カンボジアの地雷を「ニュース」ではなく、自分が関わるべき現実=自分事として捉えるようになりました。制服の布を再生して届けたシュシュは、心を支える支援であると同時に、彼らにとっては「世界の痛みを学びに変え、行動で返す」入口になったのです。

 この双方の学び――現地では命を守るための知恵として、日本では世界を自分事として引き受ける学びとして――が往還するとき、子どもたちは“支援する/される”を超え、国際社会で必要とされる次世代のリーダーシップ(想像力・実装力・責任) を身につけていきます。

支援物資にSTORYを込め、双方の学び合いを創出する。これがなかよし学園の教育支援活動

 

2)講演会から探究へ:「自分にできること」が“教材”になる設計

 なかよし学園の講演会は「聴いただけで終わらない」ことが他の講演会と一線を画すと好評を得ています。「講演会のその『先』へ」と掲げたなかよし学園の講演会は、感動で終わらせる場ではなく、「行動設計」の起点として機能しました。

 講演の最後、中村雄一代表は

「もしも君たちが難民キャンプに『教材』を届けるとしたら何を届ける?」

と生徒達に問いかけました。本当に困っている人に自分の身の回りのリソースを使って何ができるか?この問いから始まる学びが「世界とつながる学び」グローバル探究学習です。

 

生徒からは、

「世界とつながる方法はたくさんある」

「ちょっとしたアイデアでも世界に貢献できると知って驚いた」

「僕らも関わることができると思うと嬉しい」 
といった声が上がっており、活動が“善意のイベント”ではなく“自分ごとの学び”へ転換していることが分かります。

講演では戦後間もないシリア・アレッポのアラさんとリアルタイムで繋ぐ一面も

 

生徒の声(抜粋)

 矢掛高校の生徒たちは、講演を通じて「距離」を縮め、「行動」を具体化していきました。

「テレビの中だけの話だと思っていたが、身近に感じた」

「世界の現状を知り、自分にできることをしたいと思った」

「ディスカッションで自分の考えを出し、他の人の意見で深められた」

「伝えたい気持ちがあれば、世界のどこでも伝えられる」

 

 さらに「実際にやってみたいこと」として、動画制作や日本文化を象徴する遊びの提案など、次の探究へつながる具体案も複数挙がっています。

これまで多くの取り組みを行なってきたからこそ、「世界とつながる」学びが効果的なプラットフォームとして導入された

 

「普遍性」をつくる、なかよし学園のネットワーク:学校種を越えて、世界へ挑戦できる環境へ

 なかよし学園の「世界とつながる学び」は、小中高校だけでなく、フリースクールや特別支援学校まで含めて横断的に展開し、子どもたちの背景や学び方の違いを越えて、誰もが世界を舞台に挑戦できる教育環境を整備しています。
 矢掛高校のような公立高校の探究が、フリースクールの創造性や特別支援学校の実践と同じ循環(つくる→届ける→現地で使われる→還って次の学びへ)に乗ることで、「再現可能な平和教育モデル」として全国に拡張していきます。

生徒の中には制服リメイクでドレスを作ろうとしている子も。多様なアイデアで世界を応援するモデルを作る。これがなかよし学園のCoRe Loopモデル。

 

代表コメント(なかよし学園プロジェクト 代表 中村雄一)

 矢掛高校の制服リメイクは、単なるリサイクルではありません。生徒たちは「なぜ作るのか」を問い直し、戦禍で“自分らしさ”を奪われた人に届けるという目的へ、探究を進化させました。
 シュシュは小さな布の輪です。しかし、このアイテムは「あなたの人生は、まだおしゃれをしていい」「あなたは忘れられていない」というメッセージになります。学びが、誰かの今日を支える“道具”になる瞬間を、矢掛の生徒たちがつくりました。

 そして、この挑戦は特別な学校だけのものではありません。私たちは小中高校に加え、フリースクールや特別支援学校まで含めて、誰でも世界を舞台に挑戦できる環境を整えています。
 矢掛高校の実践は、「地域課題解決の探究」がそのまま「国際協働の探究」へ接続できることを証明しました。来年度の矢掛高校の取り組みが楽しみです。

世界中の「本当に支援が必要な地域」で活動を続けるなかよし学園プロジェクト中村雄一代表、中村里英事務局長

 

団体概要

特定非営利活動法人 なかよし学園プロジェクト
所在地:〒270-0021 千葉県松戸市小金原4-14-14
代表者:中村 雄一
事業内容:教育支援・平和/防災教育、探究学習の設計運用、海外(アフリカ・中東・アジア)での教育協働

ガクイチNEWS

佐賀県立唐津南高等学校の生徒が佐賀県相知町で養蜂に挑戦! “唐津ミツバチプロジェクト”を発足した生徒にインタビュー!

佐賀県立唐津南高等学校の生徒が佐賀県相知町で養蜂に挑戦...

左から:佐賀県立唐津南高等学校 食品流通科 奈切蓮華さん(3年)、野﨑宙奈さん(3年)   故郷を未来に残すために、自然を活かした魅力を創出! 佐賀県立唐津南高等学校と相知町横枕地区の住民が協力して活動している“唐津ミツバチプロジェクト”。プロジェクトの立ち上げメンバーでもある唐津南高校3年生の奈切さんと野﨑さんは、ニホンミツバチの養蜂をはじめ、横枕地区の花植えや外国人向けの農業体験ツアーなど、横枕地区の自然を活かした魅力作りに取り組んでいます。今回は養蜂に青春を捧げる、奈切さんと野﨑さんに話を聞きました。 —唐津ミツバチプロジェクトの活動内容を教えてください。 奈切:唐津ミツバチプロジェクトでは、佐賀県相知町の横枕地区でニホンミツバチの養蜂を行っています。巣箱の製作や清掃など養蜂に関することはもちろんですが、それ以外にもひまわりの種や花を植えたりなど、横枕地区の自然を活かした地域を盛り上げる活動もしています。また、昨年度は自分たちで採蜜したハチミツを使った和菓子教室を開催しました。横枕地区は、環境省の『自然共生サイト』に認定されている区域なんです。『自然共生サイト』の情報を見て来訪される外国人の方向けに、観光と農業を組み合わせたツアーなども行っています。 ▲地域住民の方たちと巣箱を設置している様子。 ▲巣箱清掃の様子。   —唐津ミツバチプロジェクト発足の経緯を教えてください。 奈切:相知町の横枕地区は、山に囲まれ、厳木川(きゅうらぎがわ)という綺麗な川が流れている自然が豊かなところです。しかし住んでいる方の多くは70歳を超えており、若い人が少なくて。10年後、20年後には横枕地区自体がなくなってしまうのではないかと思い、横枕地区を未来に残すためには新しい魅力を作ることが大事だと考えました。そこでまずは佐賀県で養蜂を行っている方が少ないというところに着目して。養蜂であれば花や植物がたくさんある地域の特徴を活かすこともできると思い、2023年にプロジェクトを発足しました。   —初めて養蜂に挑戦した感想を教えてください。 奈切:養蜂となると至近距離で蜂と接しなければいけないため、最初は怖かったです。一度間違えて巣箱を開けてしまい、巣箱から大量に蜂が出てきたことがあって。刺されるのではないかと覚悟しましたね(笑)。でも今は楽しいです! この活動を始めていろいろな方と関わることが増え、「こんな活動をしていたんだ、すごい」と言ってくれる方もいて、魅力を伝えられてよかったなと思います。 野﨑:私も最初は怖かったのですが、活動をしていくうちに“私たちがやらなきゃ”と思うようになって。横枕地区は高齢の方が多いので、私たちが先陣を切って魅力を発信していこうという責任感が生まれました。   —昨年9月に初めて採蜜を行ったそうですが、その時の感想を教えてください。...

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクが 高校生と一緒にふるさと納税返礼品を開発!

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラス...

  高校生の若い視点や発想は、地域の魅力を再発見する可能性を秘めている     “自立した持続可能な地域を作る”というビジョンを掲げる株式会社トラストバンクは、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」事業をはじめ、地域外から地域内にお金を循環させる事業、地域内でお金を循環させる事業など、ビジョンに基づいたさまざまな事業を展開しています。2024年8月には高校や大学などの教育現場と民間企業が協力する産学連携の取り組みの一環として、高校生と一緒に商品開発を行う新しいプログラムを開始! このプログラムは、高校生が主体的に地域の特産品や商品開発に関わることで、地元愛や将来への関心・意欲を高めることを目指し、地域の課題解決やキャリア形成の機会づくりとして企画されました。  プログラムの第一回には、岩手県立西和賀高等学校の3年生の生徒たちが参加! 西和賀町の食や特産品・工芸などそれぞれが興味のあるものをピックアップし、新しい商品アイデアや情報発信の方法などの企画立案をしました。企画をまとめる過程では、町内事業者をはじめとする地域の人たちと関わり合いながら、内容をブラッシュアップ。企画発表会にて、選ばれたアイデアは、事業者と協働し商品化を目指します。提案のうち、西和賀町で昔から受け継がれてきたビスケットに衣をつけて揚げた郷土食「ビスケットの天ぷら」の商品化に取り組むことに。最新の冷凍技術を使ってできたてのおいしさを再現、全国にお届けできる商品として秋の発売を目標に取り組んでいます。商品化が決定した際には、「ふるさとチョイス」の西和賀町ふるさと納税返礼品として取り扱う他、ECサイト「めいぶつチョイス」で販売予定となっています。  また今年度はすでに、島根県立浜田高等学校と、北海道導津高等学校の2校で商品開発プログラムを実施。トラストバンクの地域創生エバンジェリストの伊藤健作さんは、「未来を担う高校生と一緒に商品開発に取り組むことは、トラストバンクとしても深い意義を感じている。高校生たち若い世代の視点や発想は、地域の魅力を再発見したり、私たちでは出せなかったアイデアを出す可能性を秘めている。高校生が主体的に地域に関わり、課題や魅力を見つけ出す経験を通して、将来的に地域を支える人材へ成長してもらえることを期待している」と語ります。トラストバンクでは今後も、全国の高校生と一緒に商品開発に取り組んでいく予定です。    ▲西和賀町の郷土食『ビスケットの天ぷら』   ▲実際に自分たちでビスケットの天ぷらを揚げている様子   ▲最終発表会でのプレゼンテーションの様子   ▲商品化に向けて、町内事業者の方と試作している様子     \地域創生エバンジェリスト・伊藤健作さんからメッセージ/...

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